サロンにお電話がありました。「カタログを送ってほしい」
住所を伺うと、電車で30分ほどの街にある病院なので、「カタログだけじゃなく、ドレスを何枚か持っていきます。」というと、指定されたのが緩和ケア病棟でした。
癌で余命宣告をされて、すでに積極的な治療をせずに穏やかに過ごされているとの事。
ガラガラと大きなスーツケースと共に伺いました。
私と同世代の女性で、病院で出会わなければご病気とわからない状態の美しい方でした。
病棟の看護師さんも集まって、「私が着せるって、取り合いになるね。素敵なお支度が出来ますね」と、フランクに明るく話しています。
私が次々に広げるドレスを撫でながら、「主人と息子だけだから、きっとこんなことは思いつかないの。最期に綺麗なドレスを着て、病気でやつれて逝ったのじゃなくて、きれいな人だったねと、思ってほしい。」と、ドレスを選ばれました。
「光の庭」のドレスのことをどのように知ったのか伺うと、手帳に挟まった新聞の切り抜きを見せてくれました。
新聞の切り抜きは結構たくさんあり、かねてから情報を集め、ドレス以外にも準備をされているそうです。
残していく家族を想って準備されている「身じまい」の事を、ゆっくりと話してくださいます。
イロイロな事を乗り越えてのことだとは思いますが、美しい方だと思いました。
ご本人様から許可を得て掲載させていただいたエピソードです。